時を重ねる。

 

「年をとる」

という言葉は、一般的に、

あまり良いようには捉えられません。

建物もしかり。

「新築」「築浅」という言葉が、

ある程度のステータスを持っています。

でも、

この建物を見ると、

年をとる、

年を重ねる事によって、

得られるものがあると気付かされます。

 

場所は修学院離宮の麓、

山が近く、

小川が流れ、

自然を感じられるエリア。

花梨の木が植わっていることから

「花櫚館(かりんかん)」と名付けられたこの建物は、

34歳を迎えました。

コンセプトは「周りにとけ込むような建物」。

30年を経たコンクリートの建物は、

まわりの自然にしっくりとけ込んでいます。

 

そしてお部屋の床材は無垢のナラ材。

今でこそ賃貸物件で無垢材を使用する物件は増えてきてますが、

30年前には殆ど無かったのではないでしょうか。

「いいものを使いたい」という

家主さんの想いで敷かれたナラのフローリングは、

30年経ち、とても良い風合いが出てきました。

年を重ねる事によって、

味わいを深めてきた物件です。

それから、

お庭をのぞめるベランダや、

周辺を見渡せる開放的な屋上、

そんなオマケ要素もついてきます。

ぜひ見に来てください。

202号室

 

 

風のあわい。

 

人はいつから「境界」を作り始めたのだろうか。

家と外、仕事と休息、朝と夜。

私たちの生活は、

目に見えない境界に囲まれている。

 

内と外、光と影、日常と非日常。

けれども、境界が曖昧になったとき、

新たな気づきがあるかもしれない。

例えば、朝の光がカーテンの隙間から差し込み、

部屋の中に溶け込む瞬間。

あるいは、外の風がふと窓を抜けて、

部屋を通りすがるとき。

この部屋は、まさにそんな「境界」を柔らかくする場所。

 

町家の格子のような玄関扉を開くと、

すぐ室内に入るわけではない。

まず、土間バルコニーという半屋外のエリアがあって、

その次に室内へと入る。

 

土間バルコニーの使い方は自由。

趣味のガジェットを並べてもいいし、

植物を置いて自分だけのオアシスにするのもいい。

 

室内も、仕切りを極力減らしている。

自然光を生かしたつくりで、

外の世界と接しながらも、

自分だけの空間に戻るような感覚。

 

そして一面はガラス張りで、

土間バルコニーがよく見える。

 

土間がつなぐ内と外。

その曖昧な境界の中で、

新しい暮らしが見つかるかも。

 

 

コンクリートにたぎる情熱。

 

たとえばライブを見に行ったときなんかに

素晴らしい演者に出会ったりすると

頭がカーッと熱くなって

 

ああ、すべてを捨ててでも

この人に人生をささげてみたい!

 

みたいな。

そんな気持ちになることないですか。

 

この物件を訪れたときの私は

まさにそんな状態。

 

うわーッ!!!

出会ってしまった…!!!

かなりいい…!!!

 

無骨に見えるのに実は

計算されつくされている洗練さ。

ギリギリまでそぎ落とされたデザイン。

心をわしづかみにされた。

 

どんな理想の空間を描いたとしても

ガッツリ受け止めてくれる

懐の広さを感じた。

 

条件とかどうでもいい。

この部屋と人生を共にしてみたい。

大げさだけど

人をそんな気持ちへ至らせるに

充分な熱量が宿っている。

それがこの「太陽マンション」だ。

 

ここを建てた当時のオーナー夫妻は

日本が大きく変化した時代を生き抜いた人たち。

完成は昭和41年。

引退後の生活を見据えて建てられたともいわれる。

 

そこから約60年。

その一番新しい系譜に

このマンションを再生した人がいる。

 

マンションの来歴をしっかり受けとめて

他にどこにもない物件を。

好きなものに真剣な人が妥協しなくていい物件を。

とことんこだわった家具と暮らせる物件を。

 

そんな情熱をもって再生した人。

これらの部屋からはそのたぎるような思いが

冷たいコンクリートを介してビシビシ伝わってくる。

人の情熱は、人の心を動かす。

 

ただただもうかっこよくて

夢中で写真を撮った。

 

洗練されたマクロ視点での魅力が働いて

リノベーションで残された古い部分が

水を得たように輝いているのも印象的。

ドア、ガラス、窓、パーツ。

古くからこの部屋を見守ってきたものたち。

もう!シッブイ…!! 大好き。

 

そしてそこへ

あとから備え付けられたコンロやコンセント

電球なんかが絶妙に合わせられ

小粋に調和している様よ!

 

こんな場所が存在してくれてありがとう…。

出会えて嬉しい…。

最後は感謝に近いそんな気持ちになった。

 

三者三様、個性があるので(撮影時点での空きは3部屋)

ピンと来たところを選んでほしい。

 

60年経って、生まれ変わったこれらの部屋。

歴史の続きはここに構えるあなたがどうぞ。

「太陽マンション」は静かに出会うべき人を待っている。

過去と未来への情熱をはらんで。

 

2E

優しさに包まれて。

 

座り心地の良いソファが置かれた、

小さな坪庭を愛でる洋室が、

僕の、1番のお気に入り。

休日には、時間を気にせず、

読書をしたり、音楽を聴いたり、

美味しいビールとともに、

ゆっくりと過ごしたい、

とっておきの場所だ。

 

工務店でもあるオーナー様が、

無垢材を惜しげもなく使用して、

自ら、改装を行った京町家。

床材はナラの無垢材(オイルフィニッシュ仕上げ)、

浴室の一部には赤杉の柾板、

天井、造り付け家具、建具が、1本の丸太から製材したそう。

扉のつまみは、ナンテンの木。

質感や風合いは、やっぱり、本物ならでは。

家全体が、木の優しい雰囲気に包まれている。

そんな、愛情をたっぷりと注がれた、

幸せな建物だ。

 

また、実際の生活の場面をイメージして設計されているので、

住みやすさ、という点でも随所に工夫が。

可動収納を引き出すと脱衣スペースになったり、

キッチンにはトップライトがあったり。

 

「勝敗の鍵は、細部に宿る。」

あるスポーツ界の識者が語った言葉だが、

これはどんな事にも言えるのではないかと。

1つ1つの小さなコトを、丁寧に積み上げる事で、

成果に繋げる。

逆に、少しでも手を抜くと、

そこから綻びが生じてしまう。

建物に勝ち負けは無いけれど、

ここまで丁寧に作られたモノは、

きっと、

入居された方も大切に住んでくれる。

うん。

やっぱり、幸せな建物だ。

図面

ひだまり。

 

2014年、建築家のオーナーさんが、

自らタクトを振るってリノベーションした、

昭和58年築の分譲マンション。

元々は細かく間仕切られた、ありふれた間取りだった。

そこから生まれ変わった今の姿は、

ほぼ全ての間仕切りを取っ払った、

解放感あふれる大空間になっている。

なんと、26.8帖のドデカワンルーム。

「果てしなく続く」って、

マンションの1室に入って出てくる言葉じゃないですよね?

でも、思わず言ってしまうんです。

「果てしないなぁ~」って。

玄関から床のレベルが同じで、

床は、木目が美しいナラの無垢フローリングが、

東側の壁面には、一直線に棚板が、

ベランダまで続く。

キッチンはコの字型。

コンパクトだけど、使い勝手が良さそう。

洗面台や浴室などの水回りは、

シンプルでスタイリッシュなものをセレクト。

ガラス張りの浴室も素敵だ。

 

ナチュラルなテイストで、

優しい雰囲気。

どこかあったかくて、

心地良くって、

まるで、

ひだまりみたいな空間だ。

カイホウされる旧校舎。

 

2016年秋のオープン以来、

新聞やテレビ、雑誌など

様々なメディアに取り上げていただきました、

我らが、「the SITE」。

本当にありがたいことです。

感謝、感謝です。

 

主な用途としては、アトリエやオフィス、ショップなど。

アートやモノづくり、デザイン、

というキーワードに沿った入居者様を募集します。

特徴としては、

入居者が共同で利用できる工作室や

展示スペース(有料)がある事。

また、制作の合間に利用する事ができるシャワー室、

も備えます。

 

以下、リノベーションにまつわるストーリーです。

 

1970年。

鉄骨造2階建ての、真新しい校舎が竣工した。

そこに至るまでには、

1963年の学校創設以来、

教員と学生が自らの手で、

鉄工所跡の建物を教室に改装した事もあるそうだ。

この校舎完成の2年前には、

創設者の一人がこの世を去っている。

竣工を迎えた関係者の感慨もひとしおであったであろう。

その後、西校舎や南校舎も新築。

2009年の閉校まで、多くの卒業生を輩出した。

 

ここまでが、この物件の前身である、

「京都インターアクト美術学校」のストーリー。

 

そして、その開学から半世紀の時を超え、

2016年。

一度は閉ざされた校舎を、

再び、「カイホウ」する時がやってきた。

学校、建物が歩んできた歴史をリスペクトしつつ、

リノベーションによって新たな息吹をもたらさんとする

プロジェクト。堂々、始動。

 

物件名の「site」には、

町・建物などの位置、場所という意味や

遺跡、跡、という意味がある。

 

そして、

建物のコンセプトの1つとしての、

「カイホウ」という言葉。

まず、開け放つという意味の「開放」。

文字通り、元校舎の開放。

既成概念からの開放。

カフェや展示スペースを備え、地域への開放。

次に、貸し方の「解放」。

貸主側では必要以上に作り込みすぎない、

余白のある空間とする。

そこから先は入居者の感性に委ねる事によって、

個性あふれる空間が生まれるであろうことを期待する。

 

最後に。

願わくは、

この場所で、1つ1つ丁寧に作られたモノに、

光が当たりますように。

それらが集合体として、

大きなうねりとなって、

新しい価値を、

この場所から発信していけますように。

このまちに住んだなら。「松ヶ崎疎水」

京都下鴨修学館のあたりから

 

撮影の帰り、車の中で「こういうのって、“風光明媚”って言うのかな?」という話が出た。

個人的には、風光明媚といえば、たとえば嵯峨嵐山のような、ダイナミックな自然景観を指す印象がある。
この松ヶ崎疎水にそれを当てはめるのは、少し違う気がした。

 

泉柳橋

もちろん、ここの桜は見事だ。とても美しい。
でもそれだけじゃない。
もっと身近で、もっと暮らしに寄り添っている。
肩肘張らず、静かにそこに咲いている感じ。
花のある“地元の風景”という言葉のほうが、しっくりくる。

実際、桜を見に何人か人が集まっていたけれど、そのほとんどが近所の人のようだった。
わざわざ遠くから訪れるというより、春の散歩ついでに立ち寄る場所。
観光で疎水を見るなら、岡崎のあたりが有名だし、あとは神社仏閣に行く人も多い。

じゃあ松ヶ崎疎水は風光明媚以外にどう言い表せばいいだろう。
そんなことを考えて、少し調べてみた。

「風情がある」
「趣がある」
「絵になる風景」

うん、どれも悪くない。しっくりはくる。
でもまだ、“これだ”という言葉には出会えていない気がする。
言葉にしようとすればするほど、ちょっと逃げていくものってあるかもしれない。

ジモティー 鴨

ここは、地域のみんなのお気に入りの場所。

このまちに住んだなら。
きっとここを散歩道にして。

松ヶ崎疎水は、たぶん、そういうところだ。

art stay。

 

古くからの街並みと

伝統産業「西陣織」で

多くの人に知られる京都西陣地区。

 

建物のオーナー様は、

江戸時代・安政年間に創業の

「帯屋捨松」。

 

その建物は、

「工芸・技術・美」などの意味を含む

“アート”という単語と、

宿泊の意味を込め、

“アートステイ”と名付けられました。

 

その名に”アート”と

織り込まれているように、

「工芸・技術・美」

を感じさせる和モダンな雰囲気を纏い、

建物内は、まるで美術館のよう。

「帯屋捨松」の作品や製作道具の展示のほか、

京都にゆかりのある

芸術作品にも触れることができます。

 

エントランスに入って正面、

奥の暖簾は「帯屋捨松」制作のもの。

五つに分かれている暖簾は、

五名の織職人による作品です。

エントランス脇や共用階段には、

アーティストの作品が展示されています。

 

そして、最上階の4階。

「上をご覧ください」

などと言うまでもなく、

おそらく皆自然と目を奪われることでしょう。

南座の提灯をも手掛ける

江戸寛政年間創業「小嶋商店」の職人による

“提灯アート”が空間を温かく灯しています。

近年では数少ない、

すべての工程を手作りで行う

「京・地張り提灯」です。

 

「あしらい」

帯屋捨松さんから、

この言葉をお借りしたいと思います。

あしらいもったこの空間で

伝統や文化と共に暮らし、

共に生きる、

京都の想いを紡いでいきます。

 

帯屋捨松 http://obiyasutematsu.co.jp/index.php
小嶋商店 http://kojima-shouten.jp/ 

このまちに住んだなら。「京都に着いた日」

もう10年ほど前のことになります。
大学進学のため、故郷・宮城から京都へ引っ越しました。

両親の手を借りることもなく、夜行バスで11時間。
京都駅に到着し、地下鉄に乗り換えて、大きな荷物を抱えたまま目的の駅へ向かいました。

東北と比べると、随分と暑く感じた日でした。

ぜいぜいと息を切らしながら地上に上がり、1番出口を出たその瞬間。
目の前には、まぶしいほどの青空と、菜の花畑が広がっていたんです。

地下のひんやりとした影から一転、青空の下で風に揺れる黄色の花々。
あの瞬間のまぶしさと安心感を、今でもよく覚えています。

ああ、この街に来てよかった。
そう、自然と思いました。

離郷、見知らぬ土地、なじみのない言葉や文化、はじめての一人暮らし。
寂しさと不安と期待が入り混じっていた胸の内が、ふっとほどけたあの日。

そして今、4月上旬。
新たな暮らしを始めた方も多いことでしょう。
皆さんにも「ほっ」とできる景色との出会いがありますように。

 


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