優しさに包まれて。

 

座り心地の良いソファが置かれた、

小さな坪庭を愛でる洋室が、

僕の、1番のお気に入り。

休日には、時間を気にせず、

読書をしたり、音楽を聴いたり、

美味しいビールとともに、

ゆっくりと過ごしたい、

とっておきの場所だ。

 

工務店でもあるオーナー様が、

無垢材を惜しげもなく使用して、

自ら、改装を行った京町家。

床材はナラの無垢材(オイルフィニッシュ仕上げ)、

浴室の一部には赤杉の柾板、

天井、造り付け家具、建具が、1本の丸太から製材したそう。

扉のつまみは、ナンテンの木。

質感や風合いは、やっぱり、本物ならでは。

家全体が、木の優しい雰囲気に包まれている。

そんな、愛情をたっぷりと注がれた、

幸せな建物だ。

 

また、実際の生活の場面をイメージして設計されているので、

住みやすさ、という点でも随所に工夫が。

可動収納を引き出すと脱衣スペースになったり、

キッチンにはトップライトがあったり。

 

「勝敗の鍵は、細部に宿る。」

あるスポーツ界の識者が語った言葉だが、

これはどんな事にも言えるのではないかと。

1つ1つの小さなコトを、丁寧に積み上げる事で、

成果に繋げる。

逆に、少しでも手を抜くと、

そこから綻びが生じてしまう。

建物に勝ち負けは無いけれど、

ここまで丁寧に作られたモノは、

きっと、

入居された方も大切に住んでくれる。

うん。

やっぱり、幸せな建物だ。

図面

ひだまり。

 

2014年、建築家のオーナーさんが、

自らタクトを振るってリノベーションした、

昭和57年築の分譲マンション。

元々は細かく間仕切られた、ありふれた間取りだった。

そこから生まれ変わった今の姿は、

ほぼ全ての間仕切りを取っ払った、

解放感あふれる大空間になっている。

なんと、26.8帖のドデカワンルーム。

「果てしなく続く」って、

マンションの1室に入って出てくる言葉じゃないですよね?

でも、思わず言ってしまうんです。

「果てしないなぁ~」って。

玄関から床のレベルが同じで、

床は、木目が美しいナラの無垢フローリングが、

東側の壁面には、一直線に棚板が、

ベランダまで続く。

キッチンはコの字型。

コンパクトだけど、使い勝手が良さそう。

洗面台や浴室などの水回りは、

シンプルでスタイリッシュなものをセレクト。

ガラス張りの浴室も素敵だ。

 

ナチュラルなテイストで、

優しい雰囲気。

どこかあったかくて、

心地良くって、

まるで、

ひだまりみたいな空間だ。

恋するバスタブ。

 

落ちちゃったんです、恋に。

〇と□の奇妙な外観。

オートロック扉を開けて中に入ると、

まるでエッシャーのだまし絵に迷い込んだみたい。

カクカクと続く階段をのぼってのぼって
(エレベーターもあるよ)、

玄関扉を開けると目の前に、真っ白な空間。

裸電球に照らされた、すっきりとしたキッチン。

思わずしゃがみこんで、

のぞきたくなっちゃうような、小さな窓。

そしていよいよ、

柔らかい光が差し込む部屋の奥へ。

ちらりと見える丸いカーブに引き寄せられて、

ん?

んん?

んんんんん?

バスタブ!?

しかも空間めっちゃ広っ!

何を隠そう「リラクゼーションルーム」と名付けられたこの空間、

お部屋7帖に対して4.8帖もあるんです。

「バスルーム」ではないのでご注意を。

って、そんなことよりも、

思わず入りたくなって、そうっとバスタブの中へ。

そこには、このバスタブからしか見えない、

トクベツな景色が広がっていた。

景色を切り取るカーブがこれまた小憎い演出!

さらにトクベツ感をプラスする。

朝でも夜でもいつでも、

好きなときに好きなだけ、

この景色を、

この時間を、

この空間を、

堪能できるって、ちょっと贅沢すぎやしませんか!

 

バスタブの中でたっぷりトクベツを堪能して、

部屋を後にする。

廊下に出て、扉が閉まった瞬間、

「あ、もう一度、もう少しだけ…」

すぐに会いたくなってしまった。

あのトクベツな景色に、

あのトクベツなバスタブに。

 

カイホウされる旧校舎。

 

2016年秋のオープン以来、

新聞やテレビ、雑誌など

様々なメディアに取り上げていただきました、

我らが、「the SITE」。

本当にありがたいことです。

感謝、感謝です。

 

主な用途としては、アトリエやオフィス、ショップなど。

アートやモノづくり、デザイン、

というキーワードに沿った入居者様を募集します。

特徴としては、

入居者が共同で利用できる工作室や

展示スペース(有料)がある事。

また、制作の合間に利用する事ができるシャワー室、

も備えます。

 

以下、リノベーションにまつわるストーリーです。

 

1970年。

鉄骨造2階建ての、真新しい校舎が竣工した。

そこに至るまでには、

1963年の学校創設以来、

教員と学生が自らの手で、

鉄工所跡の建物を教室に改装した事もあるそうだ。

この校舎完成の2年前には、

創設者の一人がこの世を去っている。

竣工を迎えた関係者の感慨もひとしおであったであろう。

その後、西校舎や南校舎も新築。

2009年の閉校まで、多くの卒業生を輩出した。

 

ここまでが、この物件の前身である、

「京都インターアクト美術学校」のストーリー。

 

そして、その開学から半世紀の時を超え、

2016年。

一度は閉ざされた校舎を、

再び、「カイホウ」する時がやってきた。

学校、建物が歩んできた歴史をリスペクトしつつ、

リノベーションによって新たな息吹をもたらさんとする

プロジェクト。堂々、始動。

 

物件名の「site」には、

町・建物などの位置、場所という意味や

遺跡、跡、という意味がある。

 

そして、

建物のコンセプトの1つとしての、

「カイホウ」という言葉。

まず、開け放つという意味の「開放」。

文字通り、元校舎の開放。

既成概念からの開放。

カフェや展示スペースを備え、地域への開放。

次に、貸し方の「解放」。

貸主側では必要以上に作り込みすぎない、

余白のある空間とする。

そこから先は入居者の感性に委ねる事によって、

個性あふれる空間が生まれるであろうことを期待する。

 

最後に。

願わくは、

この場所で、1つ1つ丁寧に作られたモノに、

光が当たりますように。

それらが集合体として、

大きなうねりとなって、

新しい価値を、

この場所から発信していけますように。

このまちに住んだなら。「松ヶ崎疎水」

京都下鴨修学館のあたりから

 

撮影の帰り、車の中で「こういうのって、“風光明媚”って言うのかな?」という話が出た。

個人的には、風光明媚といえば、たとえば嵯峨嵐山のような、ダイナミックな自然景観を指す印象がある。
この松ヶ崎疎水にそれを当てはめるのは、少し違う気がした。

 

泉柳橋

もちろん、ここの桜は見事だ。とても美しい。
でもそれだけじゃない。
もっと身近で、もっと暮らしに寄り添っている。
肩肘張らず、静かにそこに咲いている感じ。
花のある“地元の風景”という言葉のほうが、しっくりくる。

実際、桜を見に何人か人が集まっていたけれど、そのほとんどが近所の人のようだった。
わざわざ遠くから訪れるというより、春の散歩ついでに立ち寄る場所。
観光で疎水を見るなら、岡崎のあたりが有名だし、あとは神社仏閣に行く人も多い。

じゃあ松ヶ崎疎水は風光明媚以外にどう言い表せばいいだろう。
そんなことを考えて、少し調べてみた。

「風情がある」
「趣がある」
「絵になる風景」

うん、どれも悪くない。しっくりはくる。
でもまだ、“これだ”という言葉には出会えていない気がする。
言葉にしようとすればするほど、ちょっと逃げていくものってあるかもしれない。

ジモティー 鴨

ここは、地域のみんなのお気に入りの場所。

このまちに住んだなら。
きっとここを散歩道にして。

松ヶ崎疎水は、たぶん、そういうところだ。

art stay。

 

古くからの街並みと

伝統産業「西陣織」で

多くの人に知られる京都西陣地区。

 

建物のオーナー様は、

江戸時代・安政年間に創業の

「帯屋捨松」。

 

その建物は、

「工芸・技術・美」などの意味を含む

“アート”という単語と、

宿泊の意味を込め、

“アートステイ”と名付けられました。

 

その名に”アート”と

織り込まれているように、

「工芸・技術・美」

を感じさせる和モダンな雰囲気を纏い、

建物内は、まるで美術館のよう。

「帯屋捨松」の作品や製作道具の展示のほか、

京都にゆかりのある

芸術作品にも触れることができます。

 

エントランスに入って正面、

奥の暖簾は「帯屋捨松」制作のもの。

五つに分かれている暖簾は、

五名の織職人による作品です。

エントランス脇や共用階段には、

アーティストの作品が展示されています。

 

そして、最上階の4階。

「上をご覧ください」

などと言うまでもなく、

おそらく皆自然と目を奪われることでしょう。

南座の提灯をも手掛ける

江戸寛政年間創業「小嶋商店」の職人による

“提灯アート”が空間を温かく灯しています。

近年では数少ない、

すべての工程を手作りで行う

「京・地張り提灯」です。

 

「あしらい」

帯屋捨松さんから、

この言葉をお借りしたいと思います。

あしらいもったこの空間で

伝統や文化と共に暮らし、

共に生きる、

京都の想いを紡いでいきます。

 

帯屋捨松 http://obiyasutematsu.co.jp/index.php
小嶋商店 http://kojima-shouten.jp/ 

間取り反転

このまちに住んだなら。「京都に着いた日」

もう10年ほど前のことになります。
大学進学のため、故郷・宮城から京都へ引っ越しました。

両親の手を借りることもなく、夜行バスで11時間。
京都駅に到着し、地下鉄に乗り換えて、大きな荷物を抱えたまま目的の駅へ向かいました。

東北と比べると、随分と暑く感じた日でした。

ぜいぜいと息を切らしながら地上に上がり、1番出口を出たその瞬間。
目の前には、まぶしいほどの青空と、菜の花畑が広がっていたんです。

地下のひんやりとした影から一転、青空の下で風に揺れる黄色の花々。
あの瞬間のまぶしさと安心感を、今でもよく覚えています。

ああ、この街に来てよかった。
そう、自然と思いました。

離郷、見知らぬ土地、なじみのない言葉や文化、はじめての一人暮らし。
寂しさと不安と期待が入り混じっていた胸の内が、ふっとほどけたあの日。

そして今、4月上旬。
新たな暮らしを始めた方も多いことでしょう。
皆さんにも「ほっ」とできる景色との出会いがありますように。

 


(比較的)近くの物件の記事▼

僕がほっとする場所。

 

 

このまちに住んだなら。「木になるおうち KOGA-NORTH」編

”ただの物件好きが縁あって不動産屋さんになってしまった”
という経歴の筆者。
歴史ある京都の街で新旧いろいろな物件に出会うのが
なにより楽しみな今日このごろです。

私の好みをよく知る広報担当の先輩が

「あそこの物件、好きそうですよ~」

なんて耳打ちしてくれた時なんか
うきうきしながら取材に出かけます。

—–

そんな感じで最近訪れたのが「KOGA-NORTH」(コガノース)。

(今は満室になっているのですが、とっても素敵なので紹介させてください…。)

KOGA-NORTH

見てくださいもう可愛いじゃありませんか。
入口で木が出迎えてくれる平屋のアパートなんて。

 

玄関扉の覗き穴がこれ!
レトロパーツ好きの心を盛り上げます。

中は小綺麗にリフォームされてあり、
単身者用のお部屋2つに分かれています。
木のぬくもりが感じられるシンプルなお部屋です。

お庭にも木が!柑橘類が実ってる!
実のなる木ってほんとに可愛いですよね…(ため息)
窓からのやさしい日差しを浴びながら
こんなお庭を眺めることができるなんて
なんて素敵なお部屋でしょうか。

—–

ここはお茶やお庭で有名な「大徳寺」のすぐ近所で
表へ出て1分も歩けば、土壁に瓦が埋め込まれた
築地塀(瓦塀)に出会えます。

塀をたどって大徳寺の境内をお散歩してもいいし、
今宮神社やあぶり餅もすぐ近くです。
ご近所をぶらぶら歩いてみてください。
魅力的なものがたくさん発見できますよ!

※物件に夢中で築地塀の写真を撮り忘れたので、最後の1枚だけお借りしました。

楽しいは連鎖して。

 

京都市街までちょっと遠い。

駅もそこそこ離れてる。

でもそんなことは、いいんです。

この空間、

眺望、朝日、山々の美しさ、

それがもうプライスレス!

 

山科区・清水焼団地町の

分譲マンションの一室。

各ジャンルのプロたちが

秘密基地に集うように、

技術やアイディアを持ち寄って

つくりあげた空間。

 

どんな議論の末こうなったのか、

どんな職人さんが作ったのか、

知らなくても、

ついにんまりしてしまう。

オーナーさんから

設計士さんや職人さんへと

次々に連鎖してきた

つくる楽しみは、

これから、住む楽しみへ。

どんなふうに暮らそうか、

考えるだけでも楽しいな。

 

とにかく、まずは

内覧してください!

この改装プロジェクトに

関わった皆さまの

こだわりや愛情、遊び心、

隅々まで詰まっています。

ぜひぜひ見に来てくださいね。

(※退去予定2025年5月末のため内覧はその後から可能です)