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幼いころ、
おしゃれな母と一緒に
よく出かけたのは、
北山だった。
植物園を散策して、
おにぎりを食べて。
キノコ文庫からはじまり、
森を抜け、小川を渡り、
いくつかの花園をめぐると、
噴水が見えてくる。
北山通りが近づいてくる。
植物園のゲートを出て、
まちにくりだすとき、
とてもワクワクした。
通りの空気がもう楽しかった。
北山の建物たち。
濃い影を映すコンクリートの壁。
ひんやりとしたステンレスの手摺。
螺旋階段や奥への通路、
地下への階段は
どこへ繋がるのか。
冷たくて、無彩色な、
立体路地空間。
不思議なお城のような、
迷路のような、異国のような。
そうだ、そうだ、
そうだった。
久しぶりに体感した、
この、コンクリ立体路地。
階段を上がったり下がったり、
はざまにある、テラスのようなところ。
踊り場なのか、店先なのか。
こういう場所に
なぜかワクワクするのよね。
建築って面白い。
かつては、最先端だった北山建築たちも、
年を重ね、また違った魅力を持ちつつある。
まちも、変わりゆく。
昔話はそっと心にしまって、
これからの北山を。
これからの、Tree’sビルを。