この物件の撮影に赴いたのは雨の日だった。
左京区は岩倉、叡山線の北側。
自然豊かで落ち着いた町並みを往くと、
不思議な佇まいの建物がふいと現れる。
異国風の置物と目が合…………わなかった。
彼女は少し高い場所から道路を眺めている。
イタリア語やスペイン語などのロマンス諸語にて
「Casa」は「家」、「Arte」は「芸術」という意味らしいから、
「Casa del Arte」とは「芸術の家」といったところだろうか。
部屋は半地下のようになっており、
入り口にはアンティークな風貌の南京錠かかっている。
楽しい。
究極のアナログ回帰。
入室してみて、とても驚いた。
ユニークもユニーク。
キッチンの真後ろにトイレとバスタブがある。
某 舞浜のテーマパークって
アトラクション待機列の場所でも
しっかり世界観を味わうことができると思う。
もはや待機列もアトラクションの一部と言えるほど、
しっかりと「別世界」を演出している。
――ソレを思い出した。
世界観がしっかりしている。
日常生活の隅の隅までアートにしてやろう、
という気合いさえ感じさせる部屋。
ガラス戸の向こうでは小雨が庭木を濡らす。
湿り気が香る中、
私は、異世界にトリップした気分になっていた。