日々の喧騒から一歩退いた路地に
ひっそりと息づく一軒家。
撮影に行ったのは、
5月上旬にしては随分と暑い日のことだった。
この家は1975年5月――丁度49年前に建てられた。
世界がまだフィルムカメラと手紙でつながっていた頃だ。
玄関を開けた瞬間、
私を出迎えたのはレトロ可愛い照明器具。
柔らかな光。
いつからここにいるのだろうか。
部屋に入ると、私の大好きなやつがあった。
昭和レトロを感じさせる型板ガラス。
夜空にキラキラと光る星をデザインしたもので、
今はもう日本では生産されていないそうだ。
* * *
ところで、この家にはユニークな特徴がある。
それは、2階へ上がる階段とは別に
わずかに段差をつけた部屋があること。
2階の窓から、その部屋を見下ろすことができる。
スキップフロアのような、中二階のような…
説明が難しいけど、とにかく「見たらわかる」面白い構造。
「家族がどこにいてもお互いの気配を感じ取れるように」
という心遣いから生まれたものだそうだ。
この家の中で、誰も孤立しないように。
実際に見て、感じてほしい。
時々忘れがちな、”一緒にいること”の大切さを、
この家は静かに教えてくれるから。