かつて、
西陣織の生産拠点として栄え、
千両箱が行き交ったことから、
「千両ヶ辻」と称された、
今出川通りから南の大宮通り。
リノベーションが行われたこの舞台は、
その大宮通りから西へ少し入った、
静かな通りに面した長屋だ。
この物件の魅力は、
装飾をそぎ落とした、
飾り気の無い、
シンプルな美しさだ。
主役はあくまでも、
住んでくれる人たち。
内装はその引き立て役。
そんなメッセージのようにも感じる。
門扉を開けると広がる、
小さなお庭。
毎日に潤いを与えてくれる、
ちょっと贅沢で、
心温まる空間だ。
そして、この庭を引き立たすためにも、
床や建具には主張の少ない、
構造用合板を使用。
B号の2階には、
大きな梁が十字に走り、
色合い的にも、
意匠的にも、
空間のアクセントとなっている。
もちろん、天井は高くて気持ちいい。
そして、マニアックな所になるが、
僕のお気に入りは、
B号の2階のサッシ。
建築当時のスチールを残し、
アイアン塗料で仕上げてある。
こういうディティールの質感に、
興奮してしまう。
建て替えではなく、
リノベーションを選択する意義というか、
昔の面影を残して、
建物の過去に思いを馳せられる所に、
面白さがあるなと。
この感覚は、
古いものを愛する方に、
共感いただける所かなと。
数ある物件の中から、
ここを選んでくれる方に。