撮影の帰り、車の中で「こういうのって、“風光明媚”って言うのかな?」という話が出た。
個人的には、風光明媚といえば、たとえば嵯峨嵐山のような、ダイナミックな自然景観を指す印象がある。
この松ヶ崎疎水にそれを当てはめるのは、少し違う気がした。
もちろん、ここの桜は見事だ。とても美しい。
でもそれだけじゃない。
もっと身近で、もっと暮らしに寄り添っている。
肩肘張らず、静かにそこに咲いている感じ。
花のある“地元の風景”という言葉のほうが、しっくりくる。
実際、桜を見に何人か人が集まっていたけれど、そのほとんどが近所の人のようだった。
わざわざ遠くから訪れるというより、春の散歩ついでに立ち寄る場所。
観光で疎水を見るなら、岡崎のあたりが有名だし、あとは神社仏閣に行く人も多い。
じゃあ松ヶ崎疎水は風光明媚以外にどう言い表せばいいだろう。
そんなことを考えて、少し調べてみた。
「風情がある」
「趣がある」
「絵になる風景」
うん、どれも悪くない。しっくりはくる。
でもまだ、“これだ”という言葉には出会えていない気がする。
言葉にしようとすればするほど、ちょっと逃げていくものってあるかもしれない。
ここは、地域のみんなのお気に入りの場所。
このまちに住んだなら。
きっとここを散歩道にして。
松ヶ崎疎水は、たぶん、そういうところだ。