正直なところ、物件資料を見ただけでは、
この物件の全貌はわからなかった。
テラスハウスとあるが、外観写真はアパートに見える。
入口はどこだろう。
この時点で、もうかなり謎めかしい。
それから、リビングに暖炉のような造作物がある。
木造の賃貸住宅で、さすがに薪火の暖炉とは考えにくい。
暖炉を模した棚なのだろうか。
なぜ?
だが、この意味のわからなさを面白く思い、
撮影に行ってみることにした。
物好きに対する妙な引力を感じたのだ。
物件があるのは、住宅街の中に鎮守の森が茂る、
西賀茂大将軍神社のほぼ目の前。
植え込みの向こうに共用通路があり、どことなく生活感が漂う。
実際に奥へ進んでみると、たしかにテラスハウスだった。
壁を共有した住戸が並び、それぞれの玄関が共用通路に面している。
ここがまた、昭和の人情漫画に出てきそうな、
ノスタルジックな空間なのだ。
ちなみに通路のコンクリートには猫の足跡が残っている。
室内も、レトロそのもの。
水回りはきれいに改装されていて清潔感があるが、
昭和築の味は落ちていない。
そして、気になっていた暖炉風造作物は、謎の存在のままだ。
想像よりしっかりした造りで、石の天板がひんやりしている。
この部屋に住むのは。
いや、付き合っていけるのは、どんな人だろう。
こちらを振り回さんとする古い家を、きっと面白がれる人。
*テラスハウスとは、各住戸が壁を共有して横に繋がっている集合住宅の種別のこと。古い物件では「長屋」と言った方がしっくりくることもある。
